みんなのサービスをもっと広げるメディア「POPCORN Lab」のシリーズ企画『事業開発Journey』では、事業成長の裏側にあるストーリーに迫ります。
今回は、個人開発者のにょすさんにインタビューを行いました。2024年10月にリリースされた「無限もじおこし」がどのように誕生し、進化を遂げてきたのか、また今後の展望について詳しくお伺いしました。
「無限もじおこし」とは?
音声やボイスメモを文字に起こせるiOSアプリです。他社の文字起こしアプリは時間制限があったり、月額1000円以上の料金が必要でしたが、本アプリは無料で無制限に利用可能。高精度な文字起こし機能と使いやすいUIが特徴で、大学での講義や会社での議事録作成など、幅広い用途で利用されています。
格安な最新技術とUXの徹底改善で、高品質なサービスを無料で提供
– まずは「無限もじおこし」の概要について教えていただけますか?
にょすさん:文字起こしに関わらず、AIツールは無料版だと精度が極端に低かったり、無料トライアルだけですぐに有料になってしまうケースが多いんです。その中で、「無限もじおこし」は無料でありながら高い精度を実現し、シンプルで使いやすいデザインを心がけました。特に使いやすさについては、事前の説明がなくても直感的に操作できることを重視しています。
– 無料でここまでの機能を実現されているんですね!設計から開発まですべてお一人で手がけられたそうですが、具体的にどのような工夫をされましたか?
にょすさん:はい、UIデザインも含めて全て一人で開発しています。工夫した点としては、特にホーム画面の設計では、使いやすさを追求するために5回ほど大幅な改修を行いました。ユーザーが迷わない動線を作るために、実際の使用シーンを想定しながら改善を重ねていきました。
– UX改善のプロセス具体的にはどのように進められているんでしょうか?
にょすさん:フィードバックの面では非常に恵まれた環境にあります。妻が以前モバイルアプリのカスタマーサクセスを担当していた経験があり、ユーザーテストや改善提案について専門的な知見を持っています。アプリの企画段階から日常的に意見交換を行い、ユーザー目線での課題発見や改善のアイデアを得ています。
例えばホーム画面の設計では、実際の操作性について詳細なフィードバックをもらいながら改善を重ねました。「ここの動線が分かりにくい」「この機能は別の場所の方が使いやすいのでは」といった具体的な指摘を得られることで、より使いやすいアプリに仕上げることができています。
– 改善を重ねて使いやすさを追求されているんですね!実際にどういった方々に使われているんでしょうか?
にょすさん:アプリ内でフィードバック収集の仕組みを作っていて、100〜200件ほどのデータを分析しています。その結果、社会人が6〜7割、学生が3割程度という構成になっています。社会人の方は主にビジネスシーンで使われていて、会議の議事録作成や商談のメモなどに活用されています。一方、学生さんは講義のメモや、留学中の英語学習など、教育関連での使用が目立ちます。最近では、海外での講義を録音して後から見返す使い方もされているようです。

最新技術と独自の工夫で実現した高精度な文字起こし
– この高い精度を実現するために、技術面ではどのような工夫をされたんでしょうか?
にょすさん:技術面では、Gemini 1.5 シリーズのモデルを採用しています。このモデルは基本的な文字起こしの精度が非常に高いのですが、そのままでは実用的とは言えませんでした。例えば、句読点や半角スペースが不規則に混在したり、環境音まで文字として認識してしまうといった課題がありました。
そこで独自の後処理を実装しました。文字起こししたテキストを読みやすい形に整形する処理を加えることで、より自然な文章に仕上げています。また、方言にも対応できるよう工夫を重ねました。
– 技術的な工夫が随所に見られますね!個人開発のアプリとしては珍しく、収益化もうまく実現されているそうですが、その戦略について教えていただけますか?
にょすさん:収益化の戦略は、今年8月のGeminiの価格改定がきっかけになりました。この価格改定により、従来の音声認識技術と比較してコストを1/50程度に抑えることができました。これにより、無料で高精度な文字起こしを提供できるようになりました。
さらに、サービスを無料で提供するために、広告収入とサブスクリプション収入を組み合わせています。
当初、バックグラウンド処理での文字起こし機能はサブスクライバー限定でしたが、ユーザーの要望を受けて無料ユーザーにも開放しました。この仕組みで、広告収入が運用コストをまかなう形を実現しています。
現在は、広告収入と運用コストが均衡しており、サブスクリプション収入を加えることで安定した収益を得ています。
AIの進化を見据えた機能拡張と差別化戦略
– 今後はどのような機能の追加をお考えでしょうか?
にょすさん:次の段階として、文字起こしデータの変換機能の実装を計画しています。具体的には、議事録形式への変換や要約、翻訳など、様々な変換プロセスを一気通貫で提供したいと考えています。これらの機能もGeminiの低コストな料金体系を活用することで、サブスクリプション範囲内で提供できる見込みです。
「無限もじおこし」という名前には責任を持ちたいと考えていて、可能な限り制限のない形でサービスを提供していきたいと思っています。そのためにも、コスト面での最適化は常に意識しています。
– 将来的にAIの発展でこの分野も変わっていくと思うのですが、差別化戦略についてはどのようにお考えですか?
にょすさん:将来的には、文字起こし処理がデバイス内で完結する時代が来ると予測しています。特にiOSでは、文字起こし機能が標準機能として提供される可能性も高いでしょう。そうなった時に差別化のポイントとなるのは、やはり使いやすさだと考えています。
私の場合、エンジニアとしての技術力を活かしながら、ユーザー目線でのUI/UX設計や、データ分析に基づく改善など、技術以外の部分での価値提供を重視しています。
音声認識技術を活用した開発スタイル
– これまでに他にどんなアプリを開発されてきたんですか?
にょすさん:現在リリースしているのは5つです。その他にデモ版として動作確認済みのものや、アイデアレベルで終わったものを含めると20個程度になります。例えば「シャべマル」という音声入力アプリや、アイデアを組み合わせて新しいアイデアを生み出す「ideaPot」なども開発してきました。
これらの開発を通じて、音声認識技術への知見が徐々に蓄積されていき、現在の「無限もじおこし」の開発にも活かされています。特に音声入力に関する技術的な理解や、ユーザーニーズの把握には、これまでの開発経験が大きく役立っています。
– これまでの開発経験の中で、特に大変だったことや課題に感じていることはありますか?
にょすさん:個人開発の最大の課題は、プロジェクトの取捨選択だと考えています。これまでに約20個のプロジェクトを開始し、そのうち5つだけが実際にリリースにこぎ着けました。残りは開発途中や企画段階で中止しています。
この経験から学んだのは、早い段階での見極めの重要性です。例えば以前開発した「ねらーAI」という2chスレッド風の掲示板アプリでは、データベースの使用量やサーバー代などのランニングコストが予想以上に膨らみ、収益化が難しい状況に陥りました。この経験があったからこそ、「無限もじおこし」では事前に収支計画を綿密に立てることができました。
– サービス開発において、特に大切にされている価値観はありますか?
にょすさん:最も大切にしているのは、「日常生活に溶け込む体験を作る」という考え方です。AIを使っているということを前面に出すのではなく、むしろそれを意識させないような自然な使用体験を目指しています。「これ、AIを使ってたんだ」と後から気づくくらいの、違和感のない体験を作りたいんです。
この考え方は、すべてのアプリ開発に共通する価値観として持っています。技術そのものよりも、その技術をいかに自然な形でユーザーに提供できるかを重視しています。

今後の展望
– 最後に、今後のキャリアビジョンについてお聞かせください。
にょすさん:教育現場で実際に使われるアプリケーションの開発に携わっていきたいと考えています。1歳半の娘の存在も、この方向性に大きな影響を与えていますね。次世代の教育のあり方を考える中で、テクノロジーがどのように貢献できるのか、実際のサービス開発を通じて探っていきたいと思っています。
また、最近は音声合成技術の進歩も目覚ましく、この分野でも新しい可能性を感じています。音声認識と音声合成の技術を組み合わせることで、これまでにない形の教育支援ツールが作れるのではないかと考えています。
個人開発は、そうしたビジョンを実現するための重要な実験の場でもあります。「無限もじおこし」での経験を活かしながら、教育分野でも新しい価値を提供していければと考えています。
「無限もじおこし」で、あなたも文字起こしを効率化しよう!
にょすさん、インタビューへのご協力を誠にありがとうございました!
技術力の高さを活かしながらも、「日常に溶け込む体験作り」という考え方を大切にされている姿勢に感銘を受けました。「無限もじおこし」のさらなる発展を心から応援しています!
高精度の文字起こしを無料で無制限に利用できる「無限もじおこし」は、会議の議事録作成や講義のメモ、留学時の語学学習など、様々なシーンで活用できる便利なツールです。
音声データを効率的にテキスト化したい方は、ぜひダウンロードしてみてください!
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